北穂高岳東稜  -前編-

 今年のGWは、4~6日の日程で、いつも一緒に山登りをする三重県のNさんと2人で、上高地から涸沢に入り、東稜経由で北穂高岳に登ってきました。

東稜というのは、北穂高岳から東方向に伸びる稜線で(真東ではないです)、涸沢から北穂高岳に登るルートのうち難易度の高い方のルートではあるが、距離が短く、初級のバリエーションルートという位置づけである。

<東稜を南側から見た。 岩が黒くギザギザしているところが通称『ゴジラの背』>
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バリエーションルートというのは、一般的な登山道よりも難易度が高く、危険を伴うので、それなりの登攀技術を持つ登山者以外は歩かない方が無難なルートのことです。
一般登山道には当然設置してあるような鎖や、ロープが無いのは当然だし、分岐点に道標さえ無いことも珍しくありません。
そして、一般登山道に比べて歩く人が少ないので、浮石や落石も多いのです。

徐々に登攀技術のレベルを上げつつある我々は、先日、白馬岳主稜登山で得た知識や技術を使って、ガイドさんに頼ることなく、我々2人だけで登ってみようと計画したわけです。

4日は上高地から涸沢までの移動だけ。

上高地はマイカーの乗り入れは禁止されており、バスとタクシーしか入れないので、あかんだな駐車場の上高地行きバスターミナルからバスで上高地へ向かいました。
バスの往復料金は一人2000円で、駐車場は3日間で1500円でした。

右がボクのリュック。

<あかんだな駐車場バスターミナルにて>
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全然大きさが違いますね。
モンベルの110Lのリュックです。
重さもかなり違います。
ボクのリュックには2人で使うモンベルの二人用テントや、テントマット、スノーバーや大き目のスノースコップも入っているのででかいんですね。
フルサイズの一眼レフカメラに24-105mmのズームレンズを入れると、30kgぐらいあったと思います。

有名な河童橋です。

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小雨が降ったりちょっと晴れたりで、いい天気ではなかったですね。
まだ8時頃なので、観光客もまばらです。


いつ見ても美しい梓川の流れ。

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上高地から梓川沿いのほぼ平坦な道を、3時間ほど歩くと横尾に着きます。
横尾を直進すると槍ヶ岳方面に行き、左折して横尾大橋を渡って行くと涸沢へ行く分岐点である。

スパゲッティを茹でるNさん。

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横尾大橋を渡ってしばらくは所々に雪が残っている林道を歩きますが、20分ほど歩いて徐々に傾斜がきつくなってくる頃には、周囲は銀世界へと変わっていきます。
谷筋にはデブリと呼ばれる雪崩の痕が嵐の海のように盛り上がっています。

荷物が重いと、涸沢は遠いです。

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涸沢ヒュッテ(山小屋)の鯉のぼりが見え始めてからが遠い。
歩いても歩いてもなかなか着かないんだなー。

<はるか遠くに涸沢ヒュッテの屋根と鯉のぼりが見える>
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普通は上高地から6時間ぐらいのところを、我々二人は前夜の寝不足もあって、8時間近くかかってしまった。

涸沢に4時頃に着いたら、テントを張る場所が残っていなくてなかなか見つからない(ToT)。

<今年も涸沢にたくさんのテントの花が咲いた>
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散々探し回ってようやく猫の額のような土地を見つけた(^^ゞ。

降ったり止んだりだった雨が、我々が涸沢に着く前から本降りになり、雨の中で急いでテントを張るも、リュックもレインウェアもびしょ濡れで、テントの中は結露しまくり、床には水がたまっていた。
羽毛のシュラフ(寝袋)だけはゴアテックスのシュラフカバーに入れて、絶対濡らさないように死守。
安眠できるかどうかが、翌日の体力回復に大きく影響するのだ。

食事のおかずはNさんが用意してくれた。
ハムステーキと野菜炒めとアルファ米のご飯。
ガーリックオイルでさっと炒めた野菜がなかなか美味しかったです。

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夕食を食べたらもうすることがないので、さっさと寝た。

5日は2時に起きて、4時には出発の予定。
高山では、午後になると天気が崩れることが多いので、明るくなるかならないかのうちに行動開始して、遅くても15時頃には下山するか、宿泊地に着いておくのが理想である。

夕方から雨、みぞれ、アラレをともなって激しい風が吹いた。
5日の天気予報は晴れだったので、朝方には風は収まるのだろうと思っていたが、一向に収まる気配がない。

起床予定時刻の2時を過ぎてもビュービュー吹いていて、テントのフライシートが飛ばされるのではないか?と心配になるぐらいだった。
東稜からの登山は両側が切り立ったナイフリッジの雪稜を歩くので、こんなに強風が吹いていたら行けるわけない。

風が止むまではどうしようもないので、暖かいシュラフでウトウトしながら朝を待った。


6時前、風がやっと穏やかになり、雲の間から僅かながら陽が差した。
東稜が難しいようなら、積雪期の一般登山道である北穂沢から登ってもいいし、とりあえず準備しようということで、朝食を食べた。

屏風岩。

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奥穂高岳方面。

<山頂付近はガスで見えなかった>
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右側の黒い所が北穂高岳の東稜で、左側が南稜。
その間は北穂沢。

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常念岳方面。

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朝食はNさん特製の雑煮。

<3個づつお餅を食べた>
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準備をしているうちに風が弱まってきたので、時刻は遅れたが予定通りに東稜を登ることにした。
テントのある涸沢から北穂高岳山頂までの標高差は約700m。
先日の白馬岳主稜登山では、半日で標高差1500mを登ったので、そのことを思えばたいした登りではないはず。

これが東稜。
黒く見える岩稜のギザギザしている所が、『ゴジラの背』と呼ばれている核心部。

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赤線のルートを登ったと思う。

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この写真の方がわかるかな。

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始めは、北穂沢の一般登山ルートを歩く。
この一般登山ルートは、スキー場の中上級者コースぐらいの雪の斜面をひたすら登るだけなので、簡単過ぎておもしろくない。
一昨年のGWには我々2人もこのルートを登ったのだが、今回はもうちょっと難易度の高い稜線沿いのルートを登ることにしたのだ。

途中から右へ別れて、東稜へと続く岩稜の基部に向かう。

<前を歩くNさん>
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雪崩の危険は無さそうだったが、万一に備えて雪深い谷筋を避けて、早めに岩稜に取り付いた。
この辺りから先は、ファインダーを覗くことなく、適当に撮った写真です。

涸沢のテント群がもうあんなに小さく見える。

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傾斜が強くなる前に、ロープを出して、末端を互いのハーネスにしっかり結んだ。
ロープを結び合った2人が同時に登攀するコンテ(コンテニュアス、continuous)という方法だ。

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ロッククライミングをする時は、トップが登る時はセカンドが安全な場所で確保し、トップが安全な場所まで登ったらセカンドを確保するという尺取虫方式で登るのに対して、2人同時に登るので日本語にすると継続登攀という。

一人が落ちたら、落ちた者ももちろんリカバリーするが、もう一人がピッケルを刺して踏ん張って滑落を止める。
滑落停止に失敗すると、二人そろって落ちていくという洒落にならない運命共同体方式なのだ。

ボクが先頭に立ってどんどん登っていった。

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敬愛するNさんと共に逝くのも悪くはないが、できれば最期は若く美しい女性の膝枕で・・・・と願っているので(^^ゞ、二人そろって落ちるわけにはいかない。

そこで、ここはやばいという難しそうな場所は、スタカットと言う尺取虫方式で互いに確保しながら越えていくのです。

一般ルートを登下山する人達がアリの行列のように見える。

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一列で歩かなくても、どこを歩いたっていいのですが、人が歩いた後は階段状になっていて歩きやすいんです。
そこを外れると、膝までとか場所によっては膝上まで沈んでしまって歩きにくいんです。

下から見上げるとどおってことない高さに見えるけど、上から見下ろすとかなりの高度感である。

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先行する若い2人組に追いついた。
彼らのうちの一人が初心者なのか、ゆっくり慎重に登っていたので我々が前に出た。

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かなり距離があいていて見えなかったが、我々の前にはさらにソロの人と、3人パーティが歩いていたので、既にトレースができていて、ルートをよく知らない我々には好都合であった。

ボクがトップに立ち、次々と難所を越えていった。
と書くとかっこいいが、大した難所は無かったのだ(^^ゞ。

難所と言えば全てが難所なんだけど、我々はそれなりのトレーニングと経験を積んできているので、難所が難所に思えない。
ちょっと麻痺している感じで逆に危険かもしれない。

核心部分の『ゴジラの背』と呼ばれる岩稜部分は、ホールドがたくさんあるし、ビレイをとる支点になる残置ハーケンも所々にあり、全く不安なくスイスイと越えてしまった。
寒い寒い雪の御在所岳でドライツーリングした時の方がよほど厳しかった。

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後編へ続く。

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by piyopiyodesu | 2012-05-07 22:30 | 登山 | Comments(0)  

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