登るよりきつい重太郎新道の下山
始めの計画では、15日に涸沢から前穂高岳に登頂。
その後、吊尾根を歩いて奥穂高岳にも登り、白出のコルからザイテングラートを経て再び涸沢へ降りてきて小屋泊。
16日は上高地まで下山するだけと予定していました。
ところが、ルートミスと悪天候のために15日は小屋で停滞したため、16日の1日だけで前穂高岳登山と下山をこなさなければならなくなりました。
奥穂高岳を経由して涸沢に戻ってくる当初の計画は、時間がかかり過ぎて無理なので、前穂高岳からは重太郎新道というルートを上高地まで下山することにしました。
この重太郎新道は一度だけ下山に使ったことがあるのですが、ものすごい急傾斜が続くので、もうこんな道は歩きたくないなあと思っていたルートです。
標高3090mの前穂高岳山頂から、1500mの上高地まで急な下りが延々と続きます。
特に、標高2000mの岳沢小屋までは転げ落ちそうになるぐらいの急坂の連続なんです。
8月12日には、この重太郎新道を下山中の40歳台の女性が100m滑落して亡くなったと、涸沢ヒュッテの掲示板に現場の写真付きで書いてありました。(御冥福をお祈りします)
下りは楽なように見えて、登りよりもずっと脚腰への負担が大きいのです。
重いリュックを背負っていると、前屈みになった時にバランスを崩して転倒する可能性も高いです。
転倒しても笑って済ませられる場所と、最悪の場合命を落とす場所があるんです。
死なないまでも、骨折や足の捻挫だけでも自力歩行は不可能になってしまい、救助を頼むことになるかもしれません。
そうなると大勢の方々に迷惑をかけることになるし、その方々をも危険にさらすことになるのです。
もちろん遭難したくてする人はいませんが、自分がそれだけ危険な道を歩いているのだということを十分に自覚して、注意する必要があります。
北尾根登攀中は左太腿の痛みは気にならなかったのですが、下り始めると再び痛くなってきて、左足ではしっかり踏ん張れないぐらいでした。
前穂高岳山頂から少し下った所に、紀美子平と呼ばれるテラス(ちょっとした広場)があります。
重太郎新道を開拓した今田重太郎氏が娘さんの名前をつけた場所なんです。
<紀美子平に向けて下ります>
一般登山道なので、所々の岩に目印の丸印が描いてありますが、バリエーションルートと大差ない厳しいルートです。
落石、滑落に気をつけて下ります。
紀美子平に着きました。
前穂高岳、奥穂高岳、岳沢経由で上高地の3方向へ向かう道の分岐点です。
お弁当を食べたり、リュックを下ろして休憩する人達を多く見かけます。
紀美子平を過ぎても急傾斜な危険な道は続きます。
この辺りで、危険な家族と遭遇しました。
鎖がぶら下がっている急傾斜な場所を、小学校2年生ぐらいの女の子が、鎖にしがみつくようにしてゆっくりゆっくり降りているんです。
お父さんは先に降りて下で子供さんを受け止めるような格好をして見守っていました。
お母さんは子供さんのすぐ上から降りていました。
2人して
「しっかり掴め、手を放すな、ゆっくりでいいぞ」
などとアドバイスしているのですが、万一子供さんの握力が限界に達して落ちてしまったら、上にいるお母さんにはどうすることもできません。
数m下にいるお父さんが無事に受け止めることができるか?
お父さんが立っている場所でさえ、決して足場のいい所とは言えません。
いくら体重が軽い子供であっても、落下して加速がついた子供を受け止められるとはとうてい思えませんでした。
2人もろとも滑落する可能性が高いと思いました。
余計なお世話かと思いましたが。
「このコースは娘さんにはまだ難しいのではないでしょうか。子供さんの安全のことを考えたらロープが必要ですよ。」
とやんわり申し上げました。
子供にも北アルプスの素晴らしい景色を見せてやりたいと思う気持ちはよくわかりますが、もっと安全なコースはたくさんあります。
せめて小学校の高学年になってから連れて来てあげた方がいいのになぁと思いました。
Nさんと二人、コース選択を誤ったなと話しながら下山したのですが、無事に下山できたかずっと気になっていました。
もしも、「手伝ってもらえませんか」と頼まれていたら、きっとロープを子供さんに結んでビレイしながら、安全な場所まであの家族に付き添っていただろうと思います。
前穂高岳の東稜と明神岳が見えました。
いずれあそこも登らないとね(^^ゞ。
北尾根はあの稜線の向こう側です。
<前穂高岳の山頂方向を見上げて>
<前穂高岳東南稜>
<奥穂高岳と前穂高岳をつなぐ吊り尾根と呼ばれる弓なりの稜線>
遥か下の方に、岳沢小屋の赤い屋根が見えてきました。
ひゃー、まだまだ遠いなぁ(>_<)。
鎖場です。
12日に滑落死した方は、おそらくここで落ちたのではないかと思う。
標高が下がると植生も変わって、花がたくさん咲いていました。
降りても降りてもなかなか小屋は近づきません。(そんな気がしました)
岳沢を渡って、やっと岳沢小屋に着きました。
ここで涸沢ヒュッテで作ってもらった朝食代わりのお弁当と、岳沢小屋の山菜うどんを食べました。
冷たい水で顔を洗ってさっぱりしました。
長ズボンを短いのに履き替えて、ヘルメットも脱いで、残りの標高差500mを歩いて上高地に戻ってきました。
14日には濁っていた梓川が、いつもどおりの清冽な梓川に戻っていました。
必ず写真を撮る河童橋にて(^^ゞ。
高校の修学旅行で訪れた思い出の場所でもあるんです。
ガスが無ければ、ボクの右手の延長線上付近に奥穂高岳の山頂が見えるんですけどね。
肉眼では厳しいけど(^^ゞ。
天気が良く、大勢の観光客でにぎわっていました。
標高1500mの上高地は十分涼しいはずなのに、雪が残っているような所から降りてきた我々にはものすごく暑く感じられました。
バスターミナルで平湯温泉経由あかんだな駐車場行きのバスを待つ間に、Nさんには悪いけどビール飲んじゃった(^^ゞ。
Nさんはアルコール飲まないし、クルマの運転はずっとNさんですからね(^^ゞ。
下山の様子を動画に撮ってみました。
あんまりおもしろくないけど、暇な方は見てくださいね(>_<)。
山歩きの雰囲気を少しでも感じていただけたら嬉しいです。
ポチっとしていただけたらもっと嬉しいです(^^ゞ。
by piyopiyodesu | 2012-08-22 07:52 | 登山 | Comments(2)
ありがとうございました。
https://www.facebook.com/masayoshi.nishida.1
自転車ブログなのによく見つけられましたね~(^^ゞ。
無事に下山されたとのこと、何よりです。
男の子だったんですね(^^ゞ。
将来は三歩みたいになりそうですね。
親としてはカタギの方がいいですかね(^^ゞ。
そのルートの厳しさはガイドブックだけでは読み切れないことがありますね、行ってみて初めてこんな道だったとは!と驚くこともありますね。
今後も安全な家族登山を楽しんでくださいね。